東京都青少年の健全な育成に関する条例改正案に対する声明
 我々、同人サークル『日韓アニメ研究会』は、2010年(平成22年)12月15日に可決した東京都青少年の健全な育成に関する条例(昭和39年8月1日条例第181号)改正案に対し、断固反対することを表明します。(条文の抜粋はこちらをご覧下さい。新しいウィンドウが開きます)
 我々が反対する理由の留意点は以下の通りです。
 但し、我々は『青少年保護のための施策としては現行制度でも十分に対応可能である』という立場であって、青少年健全育成条例そのものを蔑(ないがし)ろにする、あるいは完全撤廃を求めるものではありません。
◆性描写について、改正案第7条第1項第2号及び第9条の2第1項第2号の規定において、実写が除外されていることに大きな疑問がある。また、「性交類似行為」がどの程度を指すのか示されておらず、基準があまりにも曖昧(あいまい)であり、更に健全な性教育を行うための表現行為をも禁止していると受け取られる。

◆基準が曖昧過ぎる故にいろんな口実をつけて改正案第9条の2の規定を発動させようとする可能性が高く、自主規制を軽視あるいは無視するのではないかという疑念が拭えない。

◆ただでさえ基準が曖昧過ぎる故に、例えば、極端ではあるが「都政や都知事、都議会議員にとって都合が悪いもの(不透明な政策や私物化疑惑等)も青少年の健全な成長を阻害するおそれがある」というように拡大解釈される可能性が高く、改正案第7条第1項第1号等の規定を適用して、漫画・アニメーション・ゲームに留まらず、ありとあらゆる表現行為・媒体に対する規制を拡大・強化するおそれがある。

◆2010年12月3日、東京都小学校PTA協議会が青少年健全育成条例改正案の早期制定を求める緊急要望を石原慎太郎東京都知事に提出したことに対し、知事は「性に開放的な海外でも子どもは対象外。(日本は)野放図になり過ぎている」と延べているが、確かにインターネット上では野放し状態のように見えるが、これは日本に限ったことではない。だが、出版物に関して言えば、1977年に全国で約1万3千台あったというポルノ出版物自動販売機は、地方自治体の条例による販売制限の強化や他の媒体への移行等により衰退して、街頭では皆無に限りなく近い状態であり、出版・アニメーション・ゲーム業界では満18歳未満の者への販売禁止(いわゆる「18禁」)を示す表示を自主的に行っている。また規制の対象にならないとされる同人誌においても同様に自主的な「18禁」表示・表記が1991年から本格的に行われており、同人誌即売会の主催者側はコンビニエンスストアや書店等で販売されるいわゆる『商業誌』よりも厳しく細かい基準を以て対処しているところが多く、かなり浸透している。更に商業誌を販売する店舗等においてもゾーニングやレジから従業員が監視できるように配置する等しており、必ずしも野放図状態とは言い難い。しかし、こうした現実を東京都知事以下の権力者は無視・隠蔽(いんぺい)し続けていると受け取られる。

◆主な表現者(原作者等)・出版社・アニメーション制作会社・ゲーム制作会社が東京都に集中していることから、都条例が施行されれば、東京都に本拠地を置く出版社・アニメーション制作会社・ゲーム制作会社は都条例に従わなければならず、事実上、日本全国、更には全世界に波及するおそれがある。

◆改正案に関して、関係する業界等も交えて表現の多様性を確保するための慎重な議論をすべきであるが、それが適切に行われたか、甚だ疑問である。

◆反対意見が一般人からだけではなく、市民団体、日本雑誌協会・日本書籍出版協会・日本出版取次協会・日本書店商業組合連合会で構成する出版倫理協議会、秋田書店・角川書店・講談社・小学館・集英社・少年画報社・新潮社・白泉社・双葉社・リイド社で構成するコミック10社会等といった出版・アニメーション・ゲーム業界、日本ペンクラブ、東京弁護士会等からも挙がっているにもかかわらず、2010年12月13日に行われた東京都議会総務委員会では青少年健全育成条例改正案に対して反対する請願・陳情332件について趣旨採択を求めたが、民・自・公3党が不採択にしたこと。

◆「慎重な運用を期する」という付帯決議がなされているものの、条例に明記されていないため、済し崩し的に無視する危険性をはらんでいる。

◆石原慎太郎東京都知事の漫画・アニメーション制作者を見下す傲慢かつ侮辱的な発言の数々。
ここに主なものを掲載する。
「とにかく、反対の理由というのは、よく分かるようで分からない。つまるところは、ああいうものを構えると、書き手というか、芸術家と言えるかどうか知らないけれど、創作をしている人間たちが無言の制約を受けて、圧力を感じて、書きたいことも書けなくなるみたいなことなのでしょう。それ以外、何か理由があるの。その連中、芸術家かどうか知らないけれど、そんなことぐらいで、書きたいものが書けなくなった、そんなものは作家じゃない、本当に、言わせれば。ある意味で卑しい仕事をしているのだから、彼らは。そうだと思う、僕は。あの変態を是とするみたいな、聞けば、そういう人間がいるから、その商品という需要があるのだろうけれど、話にならない。そんなものにおもねって、反対するというのは、政治の世界だったら数ということで、正当なもので通ってしまうけれど、普通の社会ではあり得ないことです。」(2010年6月18日の定例記者会見にて)
「夫婦の性生活みたいなのを漫画に描くことが子供たちに無害だっていうなら、バカだね、そいつら。『頭冷やしてこい』と言っといてくれ」(2010年11月29日、東京都青少年健全育成条例改正に反対するちばてつや氏・秋本治氏等人気漫画家への意見を求められ、報道陣に向けて行われた発言)
「来なきゃいいよ、アニメフェアに。来年、ほえ面かいて来るよ。ずっと来なくてもいいよ」 (2010年12月15日、条例可決後の記者会見で出版社が東京国際アニメフェアをボイコットしたことについて意見を求められて報道陣に向けて行われた発言)

◆猪瀬直樹東京都副知事が2010年3月にテレビ出演した際、アダルト漫画3冊を持ち「こういう本が誰でも買える、野放しになっている」と、既にその時点でそれらの漫画は不健全図書に指定されていることを隠蔽して語っていることや、2010年12月6日、ツイッターで「マンガの関係が好きな人のなかには人生が行き止まりと感じている人が多い」「生きている女を口説きなさい」と漫画愛好者を偏見していると受け取られる発言及び2010年12月5日、都条例に異を唱えるネットユーザーを「ネトウヨ」と称し、都条例に異を唱えるネットユーザーに向かって「財政破綻した夕張を助けに行け。雪かきして来い。それならインタビューうけてもよい」とツイッターで挑発したこと。
 以上の留意点から、この条例改正案は基準があまりにも曖昧で、基準の拡大解釈や規制の拡大・強化される危険性があり、東京都が日本の首都であるが故に、この曖昧すぎる基準が日本全国に影響を及ぼす可能性が高くなるばかりでなく、日本の漫画・アニメーションは様々な国・地域でも人気が高い故に全世界にも波及するおそれがあることが窺えます。また、権力者側は現実を無視し、反対陳情を不採択によって反対する声を完全に封じて一方的に可決させたように感じられました。更に、制作者を蔑視する東京都の首長らの態度は、永年にわたって築いてきた漫画文化・アニメ文化・ゲーム文化を全て否定し、これを殲滅せしめる為にこの条例を制定したのではないかと受け取られます。我々は憤りと、興廃の分岐点に立たされた危機感を禁じ得ません。
 曖昧すぎる基準であるにもかかわらず、反対意見に一切耳を貸さない横暴な手段によって可決され、漫画・アニメ・ゲームを殲滅する目的が見え隠れする東京都青少年育成条例改正案に、我々は断固反対し、改正案の全面撤回と現行制度の維持を強く要求します
2011年(平成23年)2月6日

同人サークル 日韓アニメ研究会